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余はいかにしてスワローズクルーとなりしか

「そもそもイーグルスファンのくせになぜスワローズクルーなのか」

いくら家から一番近く、球場愛好家、なおかつチケットの割引をしてくれるからとは言え、イーグルスファンが入会するのはあまり自然な行いとはいいがたい。

東北ルーツ民としては足を向けて寝られない男こと嶋基宏の応援のためかと言われるかもしれないけど入会したのは2019年度からなので嶋のためではない。

 

それは巻き戻る事2018年秋のこと


この年のヤクルトは二位でクライマックスシリーズの出場を決めていた。
それが決まった非、年に何度か一緒に球場へ行き、日ごろからちょいちょい野球の話題で連絡をする友達(仮称:浅村さん)へクライマックスシリーズ出場のお祝いのメッセージを送った。
その前年2017年のスワローズはスローガンの通り「目を覚ませ! 」としか言いようがない負けっぷりで、ぶっちぎりの最下位をひた走っていた。なので二位が確定した時の浅村さんのテンションは非常に高く
クライマックスシリーズ観に行きましょう!!!」
「いいですね!チーム状態悪くなさそうだしファイナルはきっと行けると思いますよ!」
と大いに盛り上がり、一緒に行くことにはなった。
だがチケットについて調べるとファンクラブに入っていないとなかなか難しいだろうという事をその数時間後に思い知らされる。


当時スワローズクルーに入会していなかった自分は一瞬焦りはしたのだが、クルーの友達(仮称:銀次君)の存在を思い出し、「ファンクラブなら確実に簡単に取れるんじゃね?」などという甘い気持ちで「なんでもいいし、どこでもいいよ~二試合目がいいな~」などというふざけたオーダーを銀次君に出し、その時点ですっかり行けるつもりになっていたのである。

が、しかし。昨年の惨劇があってのSwallows RISING~再起~だったこともあってか先着受付開始早々にサーバーが落ち、全くつながらない状態になった(らしい)
自分だったらこの時点で諦めて「いやーサーバー落ちちゃってさ~ごめんごめん」なんて言って終わらせそうなものなのだけど、銀次君は違った。何時間もリロードをし、自分が行くわけでもないのに一生懸命空いている連番席を探してくれたのである。さすがにこの時ばかりは何もできないで「お願いします!」botとなっている事に申し訳なさを感じるほどであった。
そうやって銀次君が一生懸命粘ってくれたおかげで幸運にも連番で2枚手に入れる事が出来た。10月14日のGame2である。ヤクルトファンと行くんだからヤクルトが勝ち抜く姿を見た方がいいだろう。根拠もなくヤクルトの勝ちを確信し、そんな気持ちで選んだ日にちである。

 

2018年10月14日。野球好きならぴんとくるかもしれない。
結末から言えばその日はジャイアンツの菅野智之クライマックスシリーズ史上初のノーヒットノーランを達成した日である。
前日巨人が勝っていたこともあって、試合開始前は「菅野は神宮苦手だから!今日勝って勢いで明日も勝てばいいんですよ!」なんて調子のいい事を宣っていた自分も3回終わりには「一巡したからこれから・・・」とやや声が震え始め、6回が終わるころには「ま、満塁ホームラン出れば勝てますから・・・当たりは悪くないですから・・・」と絞り出すような声で浅村さんを励まし続ける他なかったのだが、そんな白々しい励ましも虚しくチケットを取ってくれた時の銀次君が見せてくれたような粘りを見せることもなく、割とあっさりと、そして自分史上初にして割と最悪の形でノーヒットノーランを目撃する事となった。

何を言えばいいかわからないとはまさにあの時の事で、わからなくなった挙句あの日山田哲人ハイボールを頼むともらえた山田哲人トリプルスリーカードなるものを「よ、よかったらこれどうぞ」とノーヒットノーランを喰らって傷心してるであろうヤクルトファンには何の励ましにもならない紙切れを渡すというポンコツマシーンとなってしまった。

帰り道も何を喋ったかあまり覚えていない程なので、とにかく空気が重くならないように思いつく言葉をひたすら発してただけなのだろうと思う。
浅村さんはもちろん元気はなかったものの「逆にここまでされたら上がってく一方なんで、来年からの応援も頑張れます!」と言ってくれた事はよく覚えていて(俺には何の罪もないのだけど)少し救われた気持ちになった。

 

そんなこんなで銀次君には迷惑をかけるし、浅村さんにはとんでもないものを見せてしまい、己の無力さと色々と申し訳なさを感じて「まぁ来年は銀次君の分も俺が取ればいいんだわ。割引率考えたらファンクラブ入会して損はないやろ。元を取るくらい行けばいい話。KEEP ON RISINGや!」と思い入会して今に至るわけである。

 

が、しかし「上がってく一方なんで!」という浅村さんの言葉や「来年取ればいいんだわ」という自分の呑気さを嘲笑うかのように「KEEP ON RISING 躍進(毛沢東もびっくり)」だったり「(黒星)NEVER STOP~突き進め!(連敗街道)」と過去二年スワローズは低空飛行を続ける。燕が低く飛ぶと雨が降るなどと言われる事が集中豪雨が起こるとしか思えないレベルの低空飛行であった。(実際集中豪雨に見舞われたくらいの悲惨さのある成績だと言えなくもない)

そんな低迷が続く中、スワローズクルーが至れる尽くせりなものだから、すっかりぬるま湯に浸ってしまい、今に至るのである。

そしてようやく今年、である。やっと銀次君に恩返しをする機会がきた。チケットが取れるかわからないけど、結果がどうであれ銀次君があの時頑張ってくれた以上には諦めないで頑張ろうと思う。

そして銀次君の分ともうひと試合分チケットが取りたいというのが本心だったりもする。浅村さんの分である。ファンにとってはなかなか悲惨な光景、体験をさせてしまった罪悪感的なもの(繰り返すが俺には何の罪もない)が自分の中にはずっと残っていて、今回チケットが取れればそれもようやく解消できるような気はする。
チケットをとれるかはわからない、取れたところで浅村さんが行けるかどうかもわからない。ただ誘い文句だけは決まっていたりもする。

「今度はスワローズの勝つところを観に行きませんか?」

 

この二つが達成出来たら来年スワローズクルーは継続しなくてもいいのかもしれないね。