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「エディ・ジョーンズ~異端の指揮官~」(東洋館出版)読書感想文

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勝戦前に無事読み終えましたわ、評伝「エディ・ジョーンズ~異端の指揮官」。

個人的な感想を言えば、個人的には面白かったし、間違いなく有用だった。ただ誰かに推薦する時は相手を選んで推薦する本かなというのが本音。

 

まず自分がエディ・ジョーンズのことを初めて知ったのは2003年ワールドカップ。その後レッズや南アフリカ代表に関わりつつサントリーのヘッドコーチになって「あ、まだこの人元気やったんやなぁ」とか。あの頃は今ほど便利というか携帯見てれば情報が入るという時代でもなかった(その代わり調べたらちゃんと情報得られた時代でもあったと思うけど)から大雑把に経歴を知ってるだけ、というレベルだったし、日本代表の監督になってからも履歴書的なキャリア遍歴と簡単な実績は知ってますという程度。(どうでもいいけど、2003年の決勝は本当に面白かった・・・)


RWC 2003 final highlights: Wilkinson drops for World Cup glory

 

この本はコーチとしてのエディ・ジョーンズだけじゃなく、ラグビーを始めた頃からアマチュア選手時代、ワーカホリックと言われるようになるきっかけを得るインターナショナルグラマースクールでの出来事、そして引退後のコーチとしてのキャリアが詳細に書かれてるのでエディ・ジョーンズがどんな人間なのか、なぜ異端なのかとか。そうした点は間違いなく理解できるはずなので、自分にとっては「面白かったし有用だった」。タイトルに偽りはなくら「異端の指揮官」だなと改めて思う。

 

この本のいいところでもあり、悪いところでもあるのが(当たり前のことなんだけども)エディ・ジョーンズのキャリアを縦軸にしつつも生まれ育ち、選手としてもプレー、そしてヘッドコーチを務めていたオーストラリアのラグビー事情や2003年には因縁の相手、2015年にはヘッドコーチとして率いることになるイングランド代表並びにRFU(イングランドラグビー協会)やアドバイザーを務めることになる南アフリカ代表とSARU(南アフリカラグビー協会)とのやりとりや事情が横糸としてバンバン出てくるので、ある程度のラグビー世界史の理解がないと読んでてもしんどい(ノンフィクションとして楽しむのもありかもしれない)と思う。いちいち登場人物に注釈とかつかないし。

逆に言えば日本語で書かれたもので世界のラグビーについての断片的な知識や当時の裏側とかを知る、整理することができる本ってあんまり多くないので、この本はそういった意味では買う価値があると言えるんじゃないですかね。

また綺麗に時系列に沿って書かれてるとも言いきれなくて、章が変わって主語が変わるとちょいちょい年代が戻った話になってたりするので、サクッと読めるか、あるいは万人に勧められるかと言われたらノーと言わざるを得ないかなと言うのが正直なところ。

 

また日本代表時代の記述はあっさりしてる印象があって(サントリー時代なんてホントにごく僅か)、比率としてはオーストラリア代表監督として迎えた2003年ワールドカップとか現在進行形のイングランド代表時代の話が多めにも感じられる。

なので4年前の日本代表チームについて知ることを期待して買うならこの本ではないと思う。

 

最後にこの本を読んで感じたことを何点か。ネタバレは極力しないようにしてますが、そう思われたら嫌なのでまあ以下飛ばしたい人は飛ばしてください。

 

まず思ったのはエディ・ジョーンズが紹介される時に「選手として目立ったキャリアはなく~」的なことを言われたりするんだけど、ランドウィックという1980~90年前半かな?くらいにオーストラリア国内で強かったチームのフッカーとしてレギュラーだったし、ホント口の悪ささえなければワラビーズのキャップを得られたんじゃないかなぁと思う。ノンキャップだから「目立ったキャリアがない」と言われるのも仕方がないんだろうけど、選手としてボンクラだったという訳ではないんですよねぇ。

 

次にエディ・ジョーンズというとやっぱり切り離せないのが口の悪さ。この本にもエピソードがいくつも載ってて「皮肉の用例ハンドブック」なんじゃないかとちょっと思った箇所も合ったりする。

頭良すぎて口が達者だからなんだろうけど、読んでいて「もう少し柔らかい言い回しあったんじゃないの…」とか「言わなきゃいいのに(笑)」と思わされるところもそれなりにあるんだけど、割と差別がドギツいオーストラリアでクウォーターだけどオージーとして育つに必要なのは「空気を読む」とかやってたら余計な苦労ばっかりしたのかもしれませんなぁ。

 

というわけで、この本を読んだからってマネジメントとか組織論とか。そういうものの参考にはならないと思う。真似できないだろうし、しない方がいい(笑)

毀誉褒貶激しい人なんだろうけど、(オールブラックスでもないのに)監督として2回、アシスタントとして1回ワールドカップの決勝を経験した人っていない(はずだ)し、ワールドカップに4回関わり、24試合で2敗しかしてない(2003年の決勝と2015年の日本-スコットランド)実績は間違いなく、ラグビーに関する知識は本物だと言わざるを得ないんだよねぇ