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『岡村靖幸 結婚への道』を読んだ感想と結婚について思ったこと

私、31歳独身なのですが、結婚に対するイメージってやっぱりなんかネガティヴなんですよね。なんか嫌だなぁ、と。別に「もっと女の子と遊びたい!」みたいなそういう欲があるわけでもなく、どちらかというとそういうのを欲するのすら面倒くさいと思ってしまう生粋の面倒くさがり屋気質のせいなんだと思うんですけど。

 

だってほら、結婚式をやるとするじゃないですか。

どうやら私は顔がそこそこ広いようで「あ、この人呼びたいな。あの人も呼びたい。待て待て、この人外しちゃいかんな」とかやっていくと結構な数になるんですよね。

で、今まで参加してきた友人たちの結婚式なんかを振り返ってみると「新婦側、こんなには集まらないんじゃないかな」ってところくらいは予想がつくわけですよ。桶狭間の戦いみたいな結婚式も嫌だし、こっちも数は減らせないし・・・

じゃあ同じくらい友達多い人を!って考えになると思うんですけど、、絶対嫌ですよ、自分くらい客呼ぶ人って(笑)絶対リク◯ートとかサイ◯ーAジェントみたいな意識高い系っぽいもん!

 

でもまぁ良き人に恵まれたら結婚してみたいな、くらいの気持ちはあるんですよね。結婚式の想像とかするくらいだからそりゃ0ではないわけですよ。

というわけで、買ってしまいました。岡村靖幸著「岡村靖幸 結婚への道」(マガジンハウス刊)。

 

岡村靖幸 結婚への道

岡村靖幸 結婚への道

 

 雑誌「GINZA」2012年9月号に始まったこの連載。前書きにはその第一回の引用があり、その文章が気に入って購入に至りました。

 

『過去に結婚したこともはないし、予兆も前兆もまだない。結婚がイヤなわけではない。否定するわけでもない。[…]昔から僕は結婚の意味がわからない。そもそも人間はなぜ結婚をするのか、したいのか。結婚とは何ぞや。』(p.2)

 

全くこれ!!もうほんとこれでした。まぁせっかく好きな岡村ちゃんがこんな企画をやってくれて単行本という形になったのだから読まないわけにもいかんだろ、と。

 

というわけでこの本は結婚経験者を中心とした32人に岡村ちゃんが「結婚とは何か」をインタビューしまくっております。中心に、としたのは二人(ミッツ・マングローブ西村賢太)は結婚未経験者だからです。

質問はテンプレになっているわけではなく、事前に岡村ちゃんインタビューイのことを丹念に下調べしてくれたおかげで、インタビューイのライフワークや人生なんかも垣間見える質問も多く、岡村ちゃん、本当にいいインタビューアーだなぁ、と感じました。

 

とは言え、ある程度通底しているテーマが3つほどありました。

 

・結婚、恋愛とクリエイティビティの関係

・結婚とPACS婚*1事実婚、同棲はなにが違うのか))))

・自分に(岡村ちゃんに)結婚を奨めるか

 

表現を変えながらですが、この3つに関しては頻繁に触れられてたイメージです。その人の立場なり職業なり家庭状況で答えは全然違っていて当然ながら答えも何もないんですけど(笑)

例えばクリエイティビティで言えば作家の川上未映子さんなんかは

『(子どもができて)圧倒的に書く量は減ってしまいました。あふれ出るものが枯渇したわけではなく、物理的な時間がないのが正直なところ。[…]表現者としての自分と子育ては、やっぱり正反対』(p.65)

なんて言ってる一方で坂本龍一さんなんかは新しい曲が出来上がると聴いて批評してもらっていたりしているので、一概にいい悪いと言えなかったりしますし、結婚を奨めるかどうかについても概ね条件付きで奨めている人が多かったり。

結婚ってなんなんだよw

 

ただまぁ結婚ものに対しての見方が変わった言葉が二つ、ありました。

一つは園 子温さんの言葉

『結婚がいいものかと問われると、いいか悪いかは、それ以前の、結婚以前の自分の生活がいいものだったか、ってことなんです。それがまあまあいいものだったら、結婚もまあまあいいものなんです。それまでの自分の生活がすごくイヤだと思って結婚に走ってしまうと、結局結婚生活もよくはならないし続かない』(p.100)

これは未婚ながらに色々思い返すと「あぁ・・・」みたいな気持ちになりますw

 

そしてもう一つはスチャダラパーBoseさんの

『結婚することによって「開かれる扉」が世の中にはいっぱいあるということなんです』(p.262)

といい、その後具体例を述べていきます。いいか悪いか、好きか嫌いかはともかくとして「開かれる扉」というものの存在に気付けて結婚にちょっと前向きになれるような気がします。(予定も前兆もないですが)

 

ただまぁ本文中よく述べられていたのは「結婚と恋愛は違う」という点ですかね。恋人が夫や妻、というよりは親友のような存在が夫や妻になるのが一番いいのだろうなぁ、と。

また当たり前のことかもしれませんが、コミュニケーションってすごい大事なんでしょうね。そこへの知恵と工夫、そして相性が結婚生活が円満に続くコツなのではないかな、というのがこの本を読んだ感想です。

 

 

また個人的に面白かったのは結婚という制度そのものへの言及でした。

『オスとメスとがペアとなり、子どもをつくり、ファミリーとして暮らす。それは約20万年前、地球上にホモ・サピエンスが出現した頃から延々と続いている自然の営みなんです。それと、国家が、『あなたたちは正式なペアです」と認める「制度」というのは、全くべつのものです』(p.125)

と述べたのは坂本龍一さん。これはちょっと大雑把すぎる言い方だなぁと思いつつ、読み進めるとホリエモンこと堀江貴文さんも

『結婚制度って、以前は合理的なシステムだったんです。人間の生存のためのシステムだったので。でもいまは、そんなものは必要ないんです。合理的な観点からも。もちろん、人間が去るだった時代はそんなシステムはなかったわけでボスあるがメスを独占していたでしょ。狩猟採取民も一夫一妻ではなかったし。』(p.229)

まぁ大体言いたいことは一緒なんじゃないかと思います。

 

で、川上未映子さんのいう

『私が抵抗感を覚えるのは、婚姻制度が異性間結婚しか範疇にしていないところなんです。異性同士で結婚して、国のお墨付きをもらった人だけが国の社会補償を受けられる。そこに嫌悪を感じるんです。セクシャルマイノリティにも同等の権利が与えられ、社会保障が受けられるようにならないと。』(p.65)

といったところも今後、問題になっていくところなんだろうなぁ、と。

ただ、まぁそういう社会保障があるから結婚という形をとる人だっているわけですよ。そう考えると結婚という制度は一体何のために、誰のためにあるのか、という疑問がますます深まったような気がします。(ちなみに岡村ちゃん『日本はフォーマットにとらわれすぎていると思うし、結婚なんてそもそも共同幻想にすぎないなって思いますね。』(p.112)と述べています。)

 

 

ミッツ・マングローブさんとの対談で結婚し、家族を築くことが世の中の正義になりつつあることに対し、岡村ちゃんはこう言います。

『結婚することがいかに正しく、ママになることや、イクメンになることがいかに正しいか。誤解があることを恐れずにいうならば、世の中がどんどん結婚ファシズムに走ってるがしてならないんです。』(p.241)

 

こうした同調圧力というか価値観を垣間見れる場所があります。そうSNSです。

 

別に悪口でいうつもりもないのですが、特に同年代が結婚し始めて、SNS等に出産育児のポストがあるたびになんとも言えない不快感を覚えてたんですよね。いや、別に結婚してない僻みとかじゃなくてですね。(だからと言って対抗してなんJのクソコラとかを粛々と貼ったりするのもどうかと我ながら思うのですが)

結婚してるしていない、子供いるいない、ひいては恋人がいるいないで充実しているか否かを第三者が評価するのなんてすごくナンセンスだろう、と思っていたんですよね。独身で好き勝手旅行するのも楽しいぞ、充実してるぞ、と。

この辺の感情を上手く表していたのはホリエモンこと堀江貴文さんでした。

『こういうことを言うとものすごく批判されるんだけど、子育てもコンテンツだと思うんです。子どもって、平凡な日々を送る多くの人にとっては人生に潤いを与えてくれる存在なんです。』(p.232)

また東村アキコさんとの対談では

東村『結婚って、結局、日常の延長なんです、なにも変わらない。ただの日常が淡々と続くだけなんです。』

岡村『じゃあなぜみんな「結婚」「子ども」っていうんです?』

東村『洗脳されてるからだと思います。『国家とゼクシィ』に。』(p.272)

 

ますます結婚というものがわからなくなってきました(笑)

 

が、結婚する気があるにせよ、ないにせよ、結婚という行為に、結婚という制度に関心があるなら一読をお勧めします。

冒頭でも述べましたが、岡村ちゃんのインタビューアー能力が高く、うまく話を振って返しているので、飽きることなくさくっと読めました。

 


清 竜人25「Will You Marry Me?」Music Video - YouTube

 

 

 

 

 

*1:Pacte Civil de Solidarité。民事連帯契約と言われ、1999年にフランスの民法改正により認められた「同性または異性の成人2名による、共同生活を結ぶために締結される契約」(フランス民法第515-1条)の通称。連帯市民協約と訳すこともある。創案者は社会党所属のパトリック・ブローシュ国民議会議員。異性あるいは同性のカップルが、婚姻より規則が緩く同棲よりも法的権利などをより享受できる、新しい家族組織を国家として容認する制度(wikipediaより